質問1

2歳になったばかりの娘が、先日頭部をうちCT検査をしました。そのときに先生に「小さな女の子だし、害が無いわけじゃない」といわれました。どのような害があって、どんな心配があるのか教えてください。

回答

頭部打撲を診断・治療する上で、今回受けられたCT検査はとても大切な検査 です。また頭部CT検査は、全国の病院で小さいお子様からお年寄りの方まで、毎日多くの方が受けている検査です。その一方で、検査で受ける放射線の影響を心配するご質問も多く受けます
頭部CT検査で放射線の影響を受けやすいといわれているのは眼の水晶体なので、私たち診療放射線技師は、なるべく水晶体に放射線があたらない角度で検査をしています。
放射線の影響を受ける最小の量をしきい線量といい、この線量より少ない被ばくでは影響が発生することはありません。
今回のCT検査による水晶体の推定被ばく線量は、しきい線量の10分の1以下と考えられますので障害が発生することはありません。また、この10分の1というのは一度に(ごく短期間に)10回以上検査を受けたらということなので、今後長い期間に、経過観察等で同じ検査を受けても心配はありません。

キーワード
※ 1.ミリグレイ:放射線による影響を表す単位です。
※ 2.しきい線量:放射線の影響を受ける最小の量。このしきい線量より少ない被ばくでは影響が発生することはありません。


質問2

妊娠4週5日目ですが(まだ市販の検査薬反応のみ)、今月末に卵巣の腹腔鏡検査を受ける為に手術前の検査で胸のレントゲンを撮りました。
後から知ったのですが、月経開始から10日以内(10日規則)であれば問題ないとのことですが、私はちょうど月経開始から15日目(だいだい28日周期)排卵前後の時期に撮影しました。ネットなどで調べてみると歯科・胸のレントゲンは問題無いとされていますが、不安です。奇形・流産・精神発達遅延など、絶対に問題ないのでしょうか?それと、妊娠2・3ヶ月ごろだと問題あるのでしょうか?

回答

私たち診療放射線技師は、同じように、レントゲン検査を受けたあとで、妊娠していることがわかり、放射線の影響がとても心配になったというご質問を時々受けています。
新しい命のお誕生に、お慶びいっぱいのところで、今回のレントゲン検査が、逆に、とても大きな不安をつくってしまったこととお察しいたします。
しかし、結論から申し上げますと、この度のことは、今あなた様が考えているほど大変なことではなかったと、私たちは自信を持って断言することができます。
仮に同じ状況が、私たちの妻や娘であったとしても、同じように安心させて、赤ちゃんの誕生をとても楽しみにしていることと思います。
まず、月経開始から10日以内に行った方が良いとされるのは、お腹の下の方(下腹部)を撮影する検査の時で、ネットでお調べになったように、歯科や胸の撮影では、その対象となっていません。それは、放射線の量が、検出するのが難しいほど、非常に少ない量であるからです。この地球上の自然界にも、宇宙や大地から自然放射線というものが存在していて、私たちはその中で生活していることをご存じでしょうか。先の非常に少ない量とは、この自然放射線と同じ程度の量であります。
もう一つの例で、東京からニューヨークヘ航空機で行った場合、今回のおよそ10倍の自然放射線を受けることになります。もちろん、妊娠の可能性のある方や妊娠初期の妊婦さんが、航空機に乗れないということは、聞きませんよね。繰り返しになりますが、今回の放射線は、測定するのが難しいような、そのくらいの量でした。ですから、胸のレントゲン検査を受けたという点に関して、他の妊婦さんとの間で、その影響について、明らかな違いを指摘することはできないのです。
私たち診療放射線技師は、医療の現場で放射線の有効利用を担当する専門職として働いています。この度のレントゲン検査が、深くご心配になるほどではないことをご理解いただければ幸いです。私たち埼玉県放射線技師会では、いつでもあなた様のようにレントゲン検査に関してご心配になっている方の力になりたいと考えております。


質問3

妊娠中に、胸部エックス線写真をとりました。胎児への害は?
 月経開始から10日以内(10日規則)であれば問題ないと聞きましたが、どういうことでしょうか。

回答

検査を受けていない妊婦さんと、明らかな違いを指摘をする事は困難です。

今回のケース 手術を受けるために必要な検査ででした。
胎児への影響は? 検査を受ける前と変わりません。
障害は? 検査を受ける前と変わりません。
10日規則とは? 下腹部を撮影する時のみ、月経開始から10日以内に行う方が良いとされる。
補足 10日規則は、歯科や胸の撮影などは対象になっていません。これは、放射線の量が調べるのが難しいほど、非常に少ないからです。(※1)

※1.私たちは日常から地球上で「自然放射線」を受けています。この量と同じ程、少ない量です。
自然放射線の量は、地域により異なりますが、このために妊婦さんや胎児に放射線の害が起こっているという事はありません。

地域と自然放射線の例
@例えば、中国、インドやヨーロッパのある地方では、あなた様が胸部エックス線検査により下腹部に受けた放射線量を、毎日、何十年と受けています。この地方で、障害を持った赤ちゃんの誕生や遺伝性の病気が多いという事はありません。
A飛行機で東京からニューヨークへ行く時に下腹部に受ける放射線量は、あなた様が胸部エックス線検査により下腹部に受けた放射線量のおよそ10倍です。しかし、妊娠の可能性のある方や妊娠初期の妊婦さんが飛行機に乗れないという事はありません。


私たち診療放射線技師は、医療の現場で放射線の有効利用を担当する専門職です。
 国民の皆さんが健康で豊かな社会生活を営むことができるように、利益と損失のバランスを常に考慮しながら業務を進めていますので、安心してX線検査を受けてください。



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