2009

No.6

埼玉放射線

■巻頭言

 「オープン・イノベーション」


埼玉県放射線技師会  会長 小 川   清



 会員一人一人がスキルを高めるべく日夜、努力をすることは、医療という命を預かる仕事を職業として選択したことに対し至極当然と考える。加えて医療技術の著しい進歩とともに、10年前の知識や技能が役に立たなくなりつつ、かつ専門性が求められる時代に生涯にわたって学習し続けることが求められている。
 命を預かる職業についた責任として、努力をし続けることは十二分に理解していてもそこは人間であり、すべてがイチローのように周囲環境に惑わされず精進し続けることは簡単ではない。凡人は励まされ、叱咤され、あるいは褒められないと頓挫してしまう。そして適切なアドバイスと道筋を示してくれる上司は多くはない。

 イチローでなければどうするか。第1に励ましあえる仲間をつくること。「おい最近やる気がないがどうした」「最近頑張っているな」と言ってくれる相手をもてるか。もちろん「類は友を呼ぶ」は存在するが・・・・。そして仲間を増やしていくことで職場の活性化が図れる。ここまではどこの職場でもそれなりに行っていると思うが、「数が集まればよい」ではない。そこに適材適所の人材がいなければ、10人いても30人集まっても同じであり、いわゆる金太郎飴状態である。第2に職場を飛び越えていけるか。今、病院内だけではなく、無数にある病院外の知識を効果的に取り込み、活用すべく、独自な知識資産を生み出すことが問われている。これは容易いことではなく、上司の強い叱咤激励や自分の生活時間をつぶしてまでやるという意志がないとなかなか動けない。病院の枠を飛び出し活動をしていくと、自分達の進むべき方向が見えてくる。見えてくるとあとは実行のみだ。 

 専門書の読破もよし、e-learningもよいが、これらは個人のスキルアップであり、これだけでは放射線技師の貢献度があがったと評価はされない。「君はいろいろよく知っているね」で終わってしまう。過去から耳学問は刹那的であり他人への波及効果を呼ばないことは明白に言われている。得られた知識を放射線技師業務に生かすべく展開が必要である。この展開とは得られた知識の文献的な検証を行い、臨床的な裏付けを確認し、わかりやすいマニュアルを作成しスタッフに教育・研修でき、結果的に患者に貢献できる。この仕事ができる技師がリーダーだ。 是非とも技師会活動に参加してほしい。勉強の場のみならずソフトボールでも、新年会や忘年会の懇談の場でも出席し、仲間の輪を病院外へ広げることにより将来必ず仕事に生かせるはずだ。外部の知識を活用すべき、その知識が有用か否かを判断する目利き力が君にあるか。足りなければ育てればよいだけだ・・・。