2009

No.2

埼玉放射線

■巻頭言

「ゴールを目指して」
埼玉県放射線技師会  会長  小川 清
 このたび総会にて会員の皆様のご承認をいただき平成21 - 22年度、3期目の会長を務めさせていただくことになりました。今回は例年にもまして、障害競走のように幾多のハードルそして水豪があり苦難が予想されます。陸上競技に於ける3,000メートル障害という競技は、3,000メートルという比較的長い距離を走るものの、約80メートルおきにハードルがあり、スピードを維持しないと、ハードルを越えることができないという過酷なレースであり、ジャンプ時の着地等で相当な体力を奪われることになるため、ペース配分を考えないと好記録はおろか完走すら出来なくなるという競技と言われております。本会はスピードを上げつつも、速度感を感じず、感じさせず、いつの間にかゴールしていたというような運営を目指したい。

 勤務先の机の中を整理していたら古いファイルが出てきました。表紙には「医療版ビッグバン」とかかれており、ぺらぺらとページをめくると、21世紀を迎えて、介護保険制度、薬価制度の改革、診療報酬制度の改革、医療提供体制の改革、高齢者医療保険制度の創設など規制緩和と自由化について詳細に記されていました。また、日本は世界一の長寿国であり高齢化社会を迎えるにあたり「医療は成長産業である」と位置づけられておりました。そして今、見回してみると、各地で公的病院の縮小廃業や小児・婦人科の閉鎖も相まって医療崩壊とよばれる状況に陥っております。

 放射線技師は主に急性期医療のなかで働いています。患者の大病院指向とともに救急医療においても1次より2次、2次より3次となり、3次救急病院の業務量が増加しスタッフの疲弊が著しい。一方2次救急病院は勤務医の減少により救急医療の縮小あるいは廃業してしまったところもあり、1.5次的救急病院となり、医師の安全志向から難しい症例は受けず、3次救急病院へ転送するケースが増えている。このような中で2次救急医療機関に勤務する放射線技師の業務は減少し、3次救急医療機関の技師は忙しい日々を送っている

 21世紀を迎えて10年、何が変わって、何が変わらなかったのだろうか。やはり急激な変化を好まない人もあり、結果的に日本的な玉虫色の決着になってしまうことが多い。昔に比べて放射線技師の能力は確かにあがってきた。WSを駆使し、3次元画像をはじめ臨床に有用な画像を提供し、またカンファレンスなどに出席し発言出来る技師も出てきた。30年以上前は学会に発表し、講演できる人が非常にすくなかったことを考えると雲泥の差かもしれない。しかし読影できる技師の能力が高いのか。本当に読影診断していくには、発生学、生理学、生化学…と基礎学問である医学知識が足りなさすぎ、卒後教育で補える範疇ではない。読影に技師も医師もないが、技師が読影する価値を失ってはならない。読影することがゴールではない。

 最後になりますが、さらに技師職能をあげて、技師会を発展させていく所存ですので、是非とも会員の皆様がたのご支援、御協力をお願いします。