2009

No.1

埼玉放射線

■巻頭言

「不確実性の時代に」



埼玉県放射線技師会  会長  小川 清
新年明けましておめでとうございます。昨年中は皆様のご支援をいただき、本会を運営することができ本当にありがとうございました。お陰様にて本会の活動も順調に推移し、会員数が減少する地方技師会が多い中、皆様の力添えにて会員数の増加を得ております。本会も昭和26年発足以来、57年を経過し今年は公益法人制度改革に伴う法人格を取得する大きな事業を迎えております。この事業に対し会員の方々のご支援、ご協力を得て一歩一歩確実にすすめていきます。

 2008年を振りかえりますと暗いニュースが多かったようです。何時の時代でも同じですが暗い話題が多くなると、より先のことが不安になり、将来を悲観的に考えるようになってしまいますが、我々人間には先のことなど見通すことはできません。過去のデータなどを用いて将来起こることが予測されている場合にはリスクということばを用い、何が起こるのかさえ予測できない場合には不確実性という用語を用いるそうですが、世の中には不確実性な部分が多々あり、確実性の部分と混在しています。この不確実性ということばから、昔読んだ核医学書での信号理論に書かれていたUncertainということを思い出しました。当時は核医学に関する和文の良書がなく、英文誌を読まざるを得ませんでした。そこに書いてあったUncertainという意味がよく理解できず、UncertainというからにはCertainという確かな信号があってこそのUncertainだったと気がつくのにすごく時間がかかりました。

脳科学者茂木は、生きていくためには大切なことは、何が起こるかわからないという不確実性を、不安に感じるのではなく、楽しいと捉えることができるかどうかと述べております。また人間の脳は本来物事を楽観的に考えるようにできているそうで、楽観的でないと脳の回路がうまく動かず、不安や恐ればかり感じると脳の働きもダウンして、いわゆる「うつ」の状態になってしまうようです。

すべての医療は不確実性ありと自明ですが、市民はまだ理解しておりません。しかし最近EBMという概念が浸透し、医療には確実な効果が期待できるものと、そうではないものがあることが明らかになり、市民も理解し始めました。医療を自然科学の実践とするのではなく人間同士のコミュニケーション相互行為と捉えるべきと発言している有識者もいます。
 不確実性の時代を迎えて、確実性をベースに、不確実性に関しても「わからないものはわからない」という考え方に基づき判断し本会をすすめていきます。今年もよろしくおねがいします