医療機器の安全管理に関する提言・要望事項が社団法人日本放射線技師会、社団法人日本臨床検査技師会、社団法人日本臨床工学技士会の3法人会長連名で厚生労働省、経済産業省に提出されたのは平成18年1月でした。提案事項が改正医療法に反映され、安全な医療を実践するために医療機器の安全管理についての省令が平成19年4月1日から施行されます。管理責任者の設置、安全研修の実施、保守点検計画の策定と適正な実施、安全情報の収集と改善のための方策など、我々が過去から今まで実践してきた内容に合致しています。
以前は「医療機器管理は臨床工学士に」という内容であったことからみればかなり臨床の現場に即した状況に修正されました。放射線技師は放射線関連機器・画像診断機器、臨床工学士は生命維持装置を中心に手術室・集中治療室・血液透析室等の医療機器、そして臨床検査技師は検体検査機器・生体検査機器・情報処理機器など臨床検査部門に関連する医療機器が管理対象となります。
しかし最近の医療技術の進歩により医療機器の普及は目覚ましく、無数の医療機器が存在していることは会員の皆様の病院を見回せば納得できるはずです。さらにIT技術の進歩により医療機器は高度化し日常診療に大きな貢献をしている一方で、器械は多種多様となり、新しい器械がどんどん入ってきて使用する看護師の負担は大きいようです。このような医療機器は前記対象職種担当から外れ多数の看護師や医師が操作し、壊れれば修理依頼という循環に陥り、管理という範ちゅうから外れています。また医療経営の面からみても、操作法を熟知していない状態での使用や管理していない医療機器は故障が多く、修理費がかさみます。医療機器の安全管理に関する提言・要望事項には、3団体が連携を密にして医療機器の管理を行えば、ほぼすべての医療機器・器具の安全管理・精度管理を網羅することができるとしていますが、今般の医療機関は経営的に厳しく効率化を求められおり文面通りには簡単にはいきません。ただ3団体とも国民の保健・医療の向上を目指し、安全で安心できる医療を向かって、医療の質向上を図ることを通して患者の安全を確保することは各団体の責務と認識し実践しております。
経営管理論にフェイヨルの渡り板理論があります。階層の原則として職務階層は、最高権威者(社長)から最下位(社員)まで、ピラミッド型に形成されており、命令と報告は縦方向に伝達されます(例:軍隊組織)。したがって横方向(別部署)への伝達は、一回トップへあがり、それから降りてくるので迅速性におとります。そこで業務を迅速に処理するために、下位の階層同士で連絡協議を行い、結果をそれぞれの上司に持ち上げるやり方を「フェイヨルの渡り板」といいます。会社でいえば総務課の係長と経理課の係長同士が話し合い結果を総務課長、経理課長へあげるやり方です。階層の原則の例外であり、渡り板の利用は単純で敏速で、確実であること、そして上位者が部下に対して渡り板の利用を奨励すれば、部下にも責任をとる習慣と勇気が形成されるといわれております。病院という多数の専門職が働く組織において、連携が強く求められ「渡り板」を多くもっているかが問われます。
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